闇夜の紅き月 第4話

(Dream City 中央区

「で・・・・なんで猫なんだ?」

今、㎡は(゜д゜)ポカーンな状況だった。

Dream City内に入ったはいいが、いきなり意味不明な姿になってしまったのだ。

しかも周りにいるのは人間ではなく二足歩行で立ち歩く動物。

とりあえず、その場に座り込んで考え込む。

”おいおい、まさか実験ミスなのか!?それとも俺だけ壊れたカプセルn(以下略)”

そんなことを考えていると突然、ビルの中でも一際高いビルから聞き覚えのある声でアナウンスが流れた。

「皆さん、どうですか?Dream Cityの技術力は。」

この声は・・・確か>>1000博士だ。

そう思いながら㎡は巨大なビルへと視線を移した。

「皆さん、今の姿にさぞ驚いたでしょう?」

そりゃあ驚くよな、いきなり動物になったら。

思わず心の中で、>>1000博士の言葉に突っ込んでしまった。

「ですが、ご安心ください!

 元の人間の姿だと色数や体などが大きいためサーバに掛かる負担が大きすぎるため、

 比較的負担の少ない動物に皆さんを変えさせてもらいました。

 とりあえず、1週間はその姿で生活してもらいます。

 それとこの町の地図はこの中央ビルの入り口にありますのでそちらを参考にしてください」

アナウンスが終わると同時に人ごみ・・・いや動物ごみは一気に中央ビルへと入っていく。

「そういえば・・・俺はどこで1週間暮らせばいいんだ?」とギコは思い出した。

「ん〜〜〜・・・・・とりあえずしばらくしてから俺も中央ビルに行こ」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「へぇ〜〜、Dream Cityって案外めっちゃくちゃ広いな」

と、㎡は思ったことを直でつぶやいてみた。

ちなみにあれから30分ほどたったあと中央ビルの中へ入ることができた。

最初は入った瞬間、巨大な地図がビルの壁に貼ってあると思ったのだが、

ビル内に置いてあったのは大量の『どうみてもATM』らしき物。

一瞬、㎡は度肝を抜かれたがいろいろと扱ってみるとそれは地図やらなんかをダウンロードする機械で、

慣れ親しむことが出来た。

とりあえず機械の指示に従ってなぜか持っていた「IDカード」を機械へ差込み地図をDLした後、

㎡はビルの休憩室で「IDカード」の地図を見てみる。

「で、俺の家は・・・っと」

㎡は独り言を言いながらも「IDカード」を指で操作する。

「IDカード」と言ってもカードではなく、薄い電子辞書のようなもので指でなぞるといろいろ操作できるのだ。

今、㎡のIDカードにはDream Cityの全体の地図が映っている。

地図を見る限り5つの区に分かれていて、

現在いる中央区にはさまざまな建物があり、

東区はファミレスやレストランなどが多い食堂街。

西区はデパートや、ゲームセンターなどが多い商店街。

北区は住宅が縦横無尽に立ち並ぶ住宅街。

そして南区には「ログアウトポイント」があった。

また南区は他の区と違って小さな孤島で、4つの区とは海で分かれており、橋でつながっている。

㎡は今の技術力はこんなすごいことも実現できるのかと改めて実感した。

「ん〜俺の家は・・・っておいおい北区の端の方かよ・・・

 わざわざ今から行くのも面倒だし・・・サクヤ達を探したいんだけどっと・・」

㎡はいろいろとIDカードを弄くってみた。

中にはメッセンジャー機能というのがあり、仲間と連絡が取れる便利な機能なのだが

そのためには相手のIDが分からないと使えないらしい。

当然㎡は誰のIDも覚えていなかった。

「まあ、サクヤの事だから西区のゲーセンにいるっぽいな」

そんな勝手な解釈で㎡は立ち上がり、西区の地図を拡大する。

そして、西区にある二つのゲ−ムセンターを確認すると中央ビルを後にした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(Dream City 西区)

「やっぱ、人多いなぁ〜」

㎡は西区の商店街を当ても無くぶらついていた。

一つ目の大規模なゲームセンターに行ったはいいがそこにサクヤの姿は無く(というか分からない)

しかも面白そうなゲームも無い。

なんかサクヤを探すのも面倒になってきたので、㎡は西区をブラブラしていたのだ。

「な〜んかね〜かなぁ〜〜」

周りにある店は食品店やコンビニ、それに武器店だった。

とりわけ㎡にとって興味のある店は無く、何度か適当な店に入ったものの、5分もしないうちに出てしまう。

「というか人多くね?」

何処を見ても人人人・・・・本当にテスターの数は120人なのか?

そんなことを思いつつも、突如㎡の視界に大きなゲームセンターが見えた。

探しもしていないのにゲームセンターを見つけられた自分の運に感謝しながらも、

㎡はそこへ足を伸ばすことにした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(ゲームセンター)

店の中はやはりゲームセンターと言ったところか。

ゲームのBGMや効果音などがうるさくて自分の出す声が分からないぐらいだ。

そんな中、ギコはあっちにいったりこっちにいったりして友人を探していた。

「くっそ〜やっぱり分からねぇ・・・サクヤはどんな動物なんだ・・・」

ゲームセンター内にもたくせんの動物がいたが、どれがサクヤなのかさっぱり分からなかった。

というか予想さえつかない。猫なのか犬なのか熊なのか・・・・

ガックリと肩を落としながら店内を徘徊していると、

レーシングゲームのコーナーで妙なテスターを発見した。

「わしょーーい!!」

「うわぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

そのテスターは二人いて片方はなんともいえない形をしている。

白い体に三角形の頭、海苔のようについた髪?

おにぎり・・・・そう、おにぎりなのだ!(笑)

何故か分からないがギコは微かな敗北感を覚えた。

そして、もう一人の絶叫しているテスターはなんと人間の姿。

たかがレーシングゲームごときで泣いているようだ。

「へぇ〜動物以外にもなれるんだ・・・・って、こんなことしてる場合じゃなかった」

とりあえず、ここに用は無くなったので㎡は急ぎ足でゲーセンを出ることに。

(ゲームセンター 外)

「ふう、やっぱゲーセンは疲れる・・・・」

とりあえず、ゲーセンのとてつもなくうるさい環境から逃れられた。

気のせいかもしれないけど耳がデカくなったから耳がメチャクチャ疲れた・・・。

んで、どうやってサクヤたちと合流するかだな。

サクヤたちと合流する手段を考えるため、㎡はゲームセンターの裏側から入ることのできる静かな地下駐車場へと向かう。

現段階では全くといっていいほど車やバイクはこの世界にないが、将来的に車やバイクが増える。

そのため、今のうちに大きな駐車場を作っておいたんだろう。

ゆっくりとゲーセンの裏側へと周り、地下駐車場の入り口へと足をまわす。

「やっぱり、静かだな〜」

予想通り、駐車場は静かで㎡のペタペタという足音だけでも響くぐらいだった。

天井の照明からはテスト時だからなのだろうか、微妙な明るさの光しか出ていないため薄暗い。

まさに考え事をするにはもってこいの場所だ。

しかし、なぜか一台の白いトラックが奥のほうに止まっている。

「だれかトラックごと持ってきたのか?」

実験開始の前、現実世界のものをデータ化してDream Cityに転送することが出来るって話は聞いてたけど・・・。

まさかトラックを持ってくるやつがいるんだなぁ。

そんなことを考えながら㎡はそのトラックの陰という場所が気に入り、

そこで考えようとトラックへと近づく。

―これが俺たちの出会いだったけ?―

その時だった。

㎡の目にテスターが映ったのは。

桃色の肌に大きな耳、赤い頬、そして悲しそうな顔をしている・・・―猫―

その猫はトラックの陰の壁によりかかり、体育座りで俯いていた。

どうやら何か必死で考え込んでるらしい。

なんとなく、㎡は喋りかけた。

「あ、あのさ」

ビクッ!と体を動かし、怯えながらその猫は㎡のほうへ振り向いた。

どうやら㎡に気づいていなかったらしい。

”やべ、驚かせたか?”と思いながらも㎡はテスターであることを確認する。

「あのさ、君もテスター?」

「わ・・私!!?テスター??・・・え・・えっと〜・・・ハ、ハイ!」

やばっ、めちゃくちゃテンパッているよ・・・

ちょっと迷惑だったかな。

というか、この透き通った高い声からして女の子だな。

「こんなところで何してんの?」

俺の素朴な質問に猫は慌てて答える。

「え・・・ええっと・・・・」

「いや、別に言わなくてもいいんだけどさ」

相手が女の子なら今のうちに、彼女ゲットだ!!

そんな野望?を秘めてその子の隣に座った。

㎡は今まで、いきなり初対面の女の子の隣に座り込むなどという大胆な行動をしたことはなかったが、

今は誰もいない。

本来の目的から逸れていることをすっかり忘れた㎡はさっそく、自己紹介から始めた。

「俺は㎡っていうんだ。高校1年。君は?」

相手の猫はしばらく口を閉じていたが、突然口を開いた。

「え、えっと・・・ころね・・・です。

 え〜と・・・・・・・・・・・コウコウイチネンです。」

”おっ!!同い歳だ!こりゃラッキー♪”


しかしこの時、㎡はまだ知らなかった。

彼女の本当の正体を。

管理AI、NO…0 AIコード「korone」

「なあ今、ころねは好きな人とかいるか?」

「えっ?!スキナヒト?・・え、え〜と・・・いないよ」

”よっしゃぁ!フリーだ!”

そんなことを考えながらもしぃの言葉にカタコトが混じっているのに気づく㎡。

ここで、㎡は一気に勝負に出た。

「じゃ・・じゃあさ、一緒に街を見て回らないか?」

「え・・・・・・えと・・・・・うん」

なんと㎡は生まれて始めてナンパに成功した

Dream Cityに自分が参加できたことを心から神に感謝する㎡。

そして㎡はころねの手を握り、立ち上がる。

「え?」

ころねは全く状況が掴めないまま㎡の手を握ったまま立ち上がった。

もちろん、㎡にとって女の子の手を握るのも初体験。

やっべ、なんだか心臓がドキドキするぜ☆

「じゃあそうと決まったら早速出発!」

こうして、㎡ところねのデートが始まった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(Dream City ???)

「くっくっく・・・モナー、やつらとうとうこの世界に来たぞ」

「そうモナね」

真っ暗な空間で二つの声がした。

突如、甲高い笑い声?がその暗闇を支配する。

「アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!!」

「NO…3。うるさいぞ」

どうやらその声は「NO…3」という者の声らしい。

「とりあえず今、街中にいるAIはまだ普通に活動しているモナ。

 何時頃ウイルスばら撒くモナ?」

「俺の合図と同時にばら撒き、ウイルスをばら撒け。

 そういえば『コードkorone』の居場所は突き止めたか?」

「まだモナ」

「なるべく早めに見つけておけ」

その発言が終わると同時に、プツリと声が消えてしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(Dream City 東区)

「さあ、早く行こうぜ!」

「う、うん」

㎡ところねは西区を駆け巡っていた。

いや、どっちかというと㎡がころねの手を引いて走り回っているだけだが。

「次、どこ行く?」

「う〜ん・・・・㎡君のオススメの所で」

「うっし、分かった。」

そう言って、㎡は近くのファミレスへとしぃを引っ張っていった。

今、㎡の気分は高揚している。

なんせ、初めてのデートだから。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「でさ、そいつがいっつもホームルームの時間に一人でボケてすべってそれがさあ」

「う、うん・・・・」

ファミレスに入り、㎡はころねに現実世界での事を話していた。

だが、㎡がどんなに面白い話をしてもころねは少しも笑わない。

”やべっ、面白くなかったか?”

㎡はさっきから何か話をして、ころねが笑わないとそういうことを考えていた。

「なあ、・・・・面白くなかったか?」

「えっ?う、ううん!とっても面白いよ」

「そ、そうか?」

さっきからこの調子だ。

㎡が何かをしゃべってはころねが無理に笑おうとする。

そろそろ㎡の話題も尽きてきた頃、今まで自分から口を開かなかったころねが突然口を開いた。

「ずっと、一緒にいられたらいいのにね」

「え?」

「ううん!ごめん!なんでもないから。

それより外、歩かない?」

「ああ、ころねが外に行きたいなら俺も行くさ!」

椅子から立ち上がり、ころねと㎡はレジを済ませファミレスから出ることに。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(Dream City 東区)

「ころねはどこに行きたいんだ?」

「わ、私?ん〜・・・・どうしよう?」

ギコ達はあてもなく大通りの人ごみの中を歩いていた。

今でも手を繋いだままという快挙っぷりに、

㎡は内心驚きながらもふと思ったことをころねに話す。

「なあ、この計画ってテスターの数は120人なんだろ?

   でも、実際ここだけでも120人以上居ないか?」

ころねが知るわけないか、と思いつつもころねの言葉を待つ。

だが、返ってきたのは予想外の言葉。

「うん、テスターの数は120人ぐらいだけど、この中には管理AIっていう人たちが混ざってるんだ」

「管理AI?」

「うん、電子生命体って言って、自分で物事を考えたり生活をしているんだ。

 お店の店員とかそういうのは殆どが管理AIなの」

「へえ〜、しぃって物知りなんだな!」

「そ、そういう訳じゃ・・・」

赤面して恥ずかしがるしぃ。

㎡はそれを見て、ますますころねのことが好きになっていった。

最初みたいに「彼女ゲットォ!」といった思いではなく、「本当に好き」という意味で。

「あっ!そういえばころねのIDを教えてくれないか?

 IDでテスター同士メッセンジャーで喋れるんだ」

「え?・・・・ん〜・・・と・・・・」

ころねが回答に困っている時、突如周りに居た人ごみがザワザワとし始めた。

中には指・・・ではなく手を空に指している者もいる。

㎡は疑問に思い、手が指している空をゆっくりと見上げた。

「な・・・・なんだ!!ありゃ!!??」

「え?・・・どうしt、えっ!!??」

二人で同時に空を見上げて固まった。

なぜなら普通、昼間は白く光り輝いている太陽が・・・・

「た・・・太陽が・・・」

――太陽が黒くなっている――

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(現実世界 AT室)

「な・・・!!なんだこれは!!」

中年男性の声がAT室に響く。

しばらくすると青年のどなり声が飛んできた。

「うるせえ!なんだよ!」

「Dream Cityに・・・バグが発生!」

「どんなバグなんだよ」

「・・・・管理AIが・・・・反乱を起こしている!!」

「なんだと!!??」

白い白衣をきた青年は急いでソファーから立ち上がり、パソコンの前に座った。

そして、Dream Cityが映っているモニターを見て驚愕する。

「な・・・・なんなんだよ・・・コレ・・・!?

  とりあえず、>>1000博士に報告をしろ!!」

声が終わったと同時に、AT室から幾つもの足音が遠ざかっていった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(Dream City 東区)

「キャァーー!!」

突如、人ごみの中で悲鳴が聞こえた。

その悲鳴が悪夢の始まり。

「な、なんだ!?何が起こっているんだ!?」

「・・・・。」

何が起こっているか分からなく落ち着きを失っている㎡と、反対に落ち着いているころね。

しかし、次の瞬間㎡にも何が起こったのか分かってしまう。

「ひ・・ひ・・人が殺されたぞーー!!!」

その声で、一気に東区の大通りはパニックになった。

それと同時に、何やら『光る武器』を持った動物がたくさん飛び出してくる。

ーーー!!!   −−−−−!!!

突如として、東区は血の海と化した。

そう、『光る武器』を持った動物・・・『管理AI』が人を殺しはじめたのだ。

東区の大通りは逃げようとする人々でごった返しになり、㎡ところねもその波に呑まれてしまった。

「こ、ころね!手を離すんじゃないぞ!!」

「う、うん」

悲鳴が絶え間なく響く町。

㎡は必死でころねの手を握り、人ごみの衝撃に耐える。

しかし、突如どこからか光る鞭のようなものが来ると同時に、㎡の腕に激痛が走った。

「ぐあっ!!」

「㎡君!!」

一瞬、㎡はころねの手を離してしまったがすぐに掴み、二人が離れないようにする。

だが、またしても光る鞭が㎡の腕に飛来する。

筋が切れたような激痛が㎡の腕を走るが、必死に絶えた。

「ウホッ!なかなかの色男ハッケン!」

謎の声がしたと思うと、また鞭が㎡の腕に絡みつく。

3度目に襲ってきた激痛にも何とか耐え切った㎡。

”くそっ!離してたまるか!!”

だが、突如ギコの手から温もりが離れた。

「っ!しぃ!!」

「㎡君!逃げて!!(ごめんね)」

㎡の腕をかばって、ころねは自ら手を離したのだった。

あっという間に、ころねは人ごみの中に埋もれて見えなくなってしまう。

㎡は必死に人ごみを押し分けようとするも、逆に弾き飛ばされてしまった。

「ころね・・・?・・・・ころねぇーー!!!!」

だが、返事が返ってくるどころかすぐにその声は悲鳴でかき消されてしまう。

”くそっ!こんなところで俺はころねを失うのか!!”

突如、またもや光の鞭が飛来する。

ーーーー!!!!

「ぐっ!!」

「アハハハハ♪なかなかの色男だねぇ♪」

㎡はその管理AIを憎しみを込めた目で睨み付ける。

10mぐらい離れた場所に、身長の高い白い猫が立っていた。

手には長く黄色に光る鞭が握られている。

”すぐにコイツを倒して、㎡を探し出す!”

――戦いが始まった――