ころねお嬢様の対決 2

「えーと、お茶をお持ちしましたぁ」

 いつもの舌足らずな声で言いながら、さとりさんがお茶を配っていく。
 コンピ研部員。さとりさんが手渡しで賜ったお茶だぞ。味わって飲むように。

「……さて、起動するまでにもう少し掛かりそうですし、ちゃんと説明書を通読でもしておきますか」
「そうだな」

 電話帳じみた冊子をテーブルの上に置き、ページを開く。
 目次から先の数ページは操作説明だったが、やり方は前作とほとんど変わっていない。
 深さの変え方やサブコマンドの呼び出しのやり方だけ確認して次に進む。

 ページをめくると艦種説明とでかでかと印字された字が目に入った。
 駆逐艦や戦艦といった種類が、それぞれの特徴と共に説明され、白黒印刷されたCGと一緒に載っている。
 ガンダムやら何やらで、どこかで見たようなデザインばかりだが、CGはかなり綺麗だ。下手をすればプレステ2のゲームに出ても違和感がない。

 俺が感心すると、コンピ研部長は得意げに胸を張った。

「部員でデザインを詰めて、サクヤさんがCG化してくれたんだ。凄いだろう?」

 まあサクヤが凄いのはよく分かった。
 ところでこの軽巡洋艦、どうみてもサラミスなんだが。

「そ、そんな事ないよ!」

 俺の呟きが聞こえたのか、PCを操作していたコンピ研部員がマッシュルームカットを揺らして立ち上がった。
 四角いフレームの眼鏡をキラリと光らせ、口角泡を飛ばして俺に詰め寄る。

「確かにちょっと似てるかもしれないけどさ、細かいところは全然違うよ!
 サラミスは単装砲だけど僕のは連装砲だし、
 サラミス艦首はミサイルランチャーだけどこっちはビーム砲になってるじゃないか。
 艦橋の位置だって違うし、よく見てよ。全然違うじゃないか!」

 細かいとこが違うって事は、大まかには同じって事じゃないのか?

「うぐ……」

 俺の反論に言葉を詰まらせ、コンピ研部員はショボショボと席に戻って作業を再開した。
 ふっ、勝った。

「で? まだ『いんすとうる』って終わらないわけ?」
「あと2分なんですから待ってくださいよ」
「遅いわね2秒でやりなさい」
「だから無茶ですってば」

 絡まれた部員君には悪いが、今回はころねも大人しく待っているといっていい部類だろう。

 俺は気にせずマニュアルのページをめくった。
 次は艦隊編成についての説明だった。

 編成は駆逐艦単位のポイント式。
 ようは最初に『駆逐艦で○隻分』の戦力が与えられ、そこから他の艦種を買っていくシステムだ。
 軽巡洋艦駆逐艦100隻分、重巡洋艦は300隻分、戦艦は500隻分、空母は2000隻分と値段が付いている。
 つまり最初に1000隻の駆逐艦を与えられたなら、戦艦1隻と駆逐艦500隻や、重巡洋艦3隻と軽巡洋艦1隻、といった具合に艦隊を編成しろということらしい。
 当然、駆逐艦1000隻のままで出撃してもいいが、戦車に向かって歩兵で突っ込んでいくようなものだな。

「だからといって戦艦2隻では駆逐艦1000隻には勝てない。編成はしっかりバランスを重視してやるべきでしょうね」
「そうだな」

 俺は頷いて㎡に同意する。
 いわゆる『歩のない将棋は負け将棋』というヤツだ。
 まあ㎡はそういった事は理解しているくせにボードゲーム全般がからっきしなわけだが。

「きっと現場指揮よりも作戦参謀が向いているのでしょう」

 破格の待遇をしたとしても、せいぜい顔と話術で立ち回る調達係が関の山だな。
 特攻野郎でいうならテンプルトンの役回りだ。

「四話に一度は素晴らしいロマンスと巡り合えるわけですね」
「言ってろ」
「ええと、つまり……」

 肩をすくめる㎡の隣では、さとりさんがマニュアル相手に湯気を吹いている。
 どうも艦種が増えたせいで、何が何だか分からないらしい。
 まあ、朝比奈さんが巡洋艦と空母の見分けを付けられなかったからといって、何一つ問題はないわけだが。

「操作方法は前回と同じみたいですし、気楽でいいんですよ」
「あぅ……ありがとう、執事くん」

 マニュアル本を胸に抱えて、照れたように顔を赤らめる姿は殺人的だ。
 ころねにさとりさんの半分でもこの慎み深さがあれば、俺の精神安定にはずいぶんとポジティブな効果があるように思えてならないが、そこまでは期待できないだろう。せめて1%なりとも、とは思うが。

「終わったーーーっ!」

 ばん、とテーブルに諸手を叩きつけてころねが叫ぶ。

「ええ、終わりましたよ」

 ずっところねに絡まれていたコンピ研部員がぐったりとした様子で席を空ける。
 いやはやご苦労な事だ。
 ついでにころねの隣でワガママを聞く立場の心労について理解してくれたなら、俺に対する同情と畏怖の念を周囲に広めてくれてもバチは当たらないと思うぞ。

「ぶつくさ呟いてないでさっさと始めるわよ、みかりー!」
「へいへい……」
 というわけで俺たちはコンピ研の連中に横から指導されながら、ゲームを開始した。

 結論から言ってしまえば今回の俺たちは結構、上手くやった。
 敵のコンピューターのレベルを低めにして貰ったというのもあるが、前回の無様な全滅ぶりからすれば相当な進歩だ。
 俺と㎡はそれなりに敵を打ち倒しつつ、戦闘機や機雷のような新しいコマンドを試してみる余裕があった。
 さとりさんは艦隊数を二倍に設定したわけだが、ゲームが苦手なわりにはよく戦った方だろう。
 分艦隊も封印されて艦数も半分だったとはいえ、長門は言うまでもない。
 そしてころねはというと、なぜか鶴翼陣形が大のお気に入りになってしまっていた。前回、コンピ研部長の旗艦を袋叩きにしたのがよほど脳汁モノだったのかもしれない。

「よし! 掛かったわ!!」

 嬉々として敵を引きつけ、高笑いと共に包囲殲滅していく姿はけっこう様になっている。
 まったく、同じチームになりたくないとは言ったが、敵にも回したくないヤツになっちまいやがって。

「まあ味方にするには強いほうがいいし、敵に回るなら歯応えのあるほうがいいだろう」
「そーいうもんかね」
「ま、明日のくじ次第さ」

 俺の画面を覗き込んでいるコンピ研部長と毒にも薬にもならない会話をしている間に、ころねはまた小規模な分艦隊を追い掛け回してはしゃいでいた。

「逃げるんじゃないわよ! あー、もう! さっさと沈みなさい!」
「あ、あのころね、あんまり追いかけると……」
「旗艦。危険深度。更に敵艦、直上に多数」

 サクヤの冷静きわまるアナウンスと同時に、ころねの艦隊を猛攻が襲った。真上から撃ち下ろしてくる敵艦隊だ。

 宇宙艦隊戦に上だの下だのがあるか、と思うかもしれないが、このゲームにはあるのである。
 具体的には、深度10を越えると自動的に艦隊を葬ってしまう恐怖の木星引力圏がある方が下だ。
 そしてころねの艦は敵を追いすぎていまの深度は10。そこに攻撃を食らったノックバックで深度を1下げられると……。

「あー、もう! なんでいきなりコントロールできなくなるのよ!!」 

 そんな悲鳴を残して、うちの総大将は木星に引寄せられて流れ星になっちまいましたとさ。
 暗くなった画面にはゲームオーバーの文字が憎ったらしく踊っている。

「くーやーしぃーーーっ! こうなったら通算で勝つまで止めないわよ! ほら、もう一度やる方法教えて!」
「あ、ああ。タスクバーからこれを選んで、艦隊を再編成してからスタートを……」

 やれやれ、まだやるつもりか。
 それなりに面白いからいいが、ゲームは逃げないというのに必死なもんだ。
 俺は肩をすくめて艦の再編成にとりかかる。
 今度は空母を少し増やしてみるか。

「さて、後は分からない事があったらマニュアルをみてくれ。僕らはそろそろ戻るよ」
「そうか」

 団長様は編成に夢中なようなので、代わりに俺が答える。
 狭い部室じゃないが、コンピ研の連中まで詰め込むとさすがに容量オーバーだしな。
 そんな事を考えて俺は戸口に視線をやって。
 息を呑んだ。

「執事君?」

 思わず立ち上がった俺に、さんが不審そうな声を上げる。
 俺を驚かせたのはさとりさんなのに、さとりさんは驚いた俺を見て驚いている。まったく、頭がこんがらがる。

「悪い、少し急用ができた。適当にやっててくれ」

 それだけ伝えて、俺は闇軍団の部室を飛び出した。

「あ、ちょっと、みかりー!?」
「どうされたのでしょうね?」
「……異時間同位体
「サクヤさん。いじかんどーいたい、って何ですかぁ?」
「つまり、あなたの事」

 俺は廊下に飛び出すとさっと左右を確認した。
 居ない。
 居ないが、ほのかな香水の香りが残っている。
 さっきまで彼女がここに居て、戸口から部室を覗き込んで、俺にウィンクした。それだけは確かな事だ。
 普段は使わない鼻をフルに活用して、香水の匂いを辿る。
 階段を二段飛ばしで昇っていき、最上階へとたどり着く。

「さとりさん!」

 俺は屋上のドアを乱暴に開けた。

「久しぶりね、執事くん」

 落ち着いた、それでいて良く通る声が俺の耳朶を撫でる。
 そこには特盛りバージョンのさとりさん(大)が、屋上の風に亜麻色の髪をなびかせながら佇んでいた。


続く…

ころねお嬢様の対決 1

「あ〜、退屈ね。何か面白いこと無いのかしら」

 ころねにとって季節は大きく二通りに大別される。
 ひとつは『退屈な時』で、もう一つはそうでない時である。
 つまるところこれは退屈な時に言うころね流の時候の挨拶と受け取る事もできるわけだ。

 実際、闇軍団の部室は他人から見ても退屈な光景だと思われる。

 俺と㎡はチェンジ3回のポーカーを延々と続けている。チップはマッチ棒だ。
 さとりさんはいつものメイド服姿で本棚の整理中。サクヤは今日は姿もみえない。
 そして我らが団長こところねは、闇軍団ホームページのカウンターをカチカチ回している。

 時候の挨拶も出てくるというものだ。

 テーブルの上に置かれた五台のノートパソコンも微妙に寂しそうに見える。

 そりゃそうだ。

 ころねが退屈のあまりソリティアをやった6分25秒とマインスイーパーの3分23秒。
 それから俺が『The Day of SagittariusⅢ』の一人プレイを攻略した4時間。
 コンピ研からぶんどったノートパソコンの総使用時間はしめて4時間9分48秒である。

 ここまで完璧に部室のインテリアにするぐらいならコンピ研に返却したいものだが、団長のことだ。意地でも置いておくに違いない。
 そのうち型落ちしてホコリが積もって誰も使わないまま電気街の中古屋に流れ。うん、哀れなパソコンの末路は決まったな。

「退屈と認識したのなら、何が退屈ではないのかも理解できるでしょう。
 そうなればころねさんが退屈でないと思う事をすればいい。
 それとも少し待ってみるのも良いかもしれません。
 ひょっとしたら面白いことも案外、外からやってくるかもしれませんよ」

 3と5のフルハウスを出しながら、㎡がいつものいかがわしい笑顔でころねに言う。
 毎度の事ながら毒にも薬にもならん事しか言わないな、コイツは。

「そんなに簡単なもんかね」
 俺は手札を表返した。ストレートフラッシュ。㎡がレイズしまくった15本のマッチ棒をいただく。
「ええ、向こうからやってくる場合には、ですが」
 ㎡がいけ好かない笑顔を向けてくるのと同時に、面白い事はやって来た。

 ガチャ、と部室の扉を開いて、サクヤを引き連れたコンピ研部長の姿で。

「今日はちゃんと全員揃っているみたいだな」
 ドアを開けたサクヤの肩越しに、コンピュータ研究会部長、略してコンピ研部長が不敵な表情を浮かべる。

 サクヤは部室に入ってくるなり、ツカツカ定位置のパイプ椅子に腰を下ろす。
 俺はさとりさんの淹れてくれた煎茶を啜りながら、事の成り行きを傍観する。

「またアンタ達? この前ギタギタにされたのにまだ懲りてないわけ?」

 ころねが調子抜けしたように言う。
 ところでこの前のゲームでコンピ研をやっつけたのはサクヤだったと思うぞ。

「十分懲りたさ。今回はパソコン賭けるような無茶はしない」

 ころねに挑むだけで十分無茶だと思うのは俺だけか。

「とりあえず、このゲームを受け取って欲しい」

 部長の後ろで控えていたコンピ研部員のひとりが、ころねにゲームを手渡す。なんとDVD‐Rだ。

「The Day of SagittariusⅣ、ね。この前のアレと何か違うの?」
「とても違う」

 胡散臭そうに尋ねるころねに、コンピ研部長はふっふっふ、と不敵な笑みを浮かべる。
 ⅢがⅣに変わっただけでずいぶんエラそうだな、コイツ。

「サクヤさんの協力で全データ一新。
 これまでの平面座標から深さの概念が加わった三次元座標式になったし、艦種もコマンドも大増量。
 何よりCGの導入で視覚的にもバージョンアップしてるんだ。もはや別のゲームといっていい」

 つまり、サクヤが別のゲームに作り変えちまったってことか?

「これもサクヤさんの協力があっての成果。という事でテストプレイの一環として闇軍団に勝負を申し込みたい」
「ふーん」

 説明を聞いていたころねが鼻を鳴らした。
 顔にはしっかり、退屈しのぎにはなりそうね、と書いてあったが。

「いいわ。今度もまた闇軍団の大勝利で飾ってやるんだから」
「あー、それなんだが……」

 コンピ研部長はころねの発言を押し止めて口を開いた。なんとも命知らずな奴だな、おい。

「今回は混成チームで勝負しないか?」
「混成チームぅ?」

 ころねが素っ頓狂な声を上げた。
 しかし、瞳の輝きが変わったのを見ると興味津々のようだ。
 どうやら『混成チーム』なる単語がころねのスイッチを入れちまったらしい。

「それはつまりクジ引きでチーム分けして執事や㎡くんが敵になるってことよね?」
「なんでそんな限定的なんだ?」

 俺のツッコミを無視して、ころねが目を輝かせてガッツポーズする。

「その話、乗ったわ! 当然勝ったチームの総大将は負けたチームに命令して結う事を聞かせるわ。絶対服従! 逆らったら死刑だから!」

 ころねは相変わらずもう勝った気でいるんだな。
 できればコイツと同じチームにはなりたくないもんだ。

「ま、まあ承諾は貰えたみたいだし、さっさとインストールして退散するとしようか」

 コンピ研部長が気圧されて顔を引きつらせながら言う。
 まったく、今から負けててどうする。

「おっけー。明日には対決よ!」
「慣れるために少しは時間を頂いたらどうですか? この前は一週間だったわけですし」
「却下。あたしはさっさと遊びたいの」
「左様ですか。ではご随意に」

 ㎡はにこやかにころねに答えながら、コンピ研部員からちゃっかりマニュアルを受け取っている。
 俺もマニュアルを手渡されたが、なんとも手にずっしりと重い。電話帳か、こりゃ。

「システムが複雑化してますね。
 基本動作だけなら前作とそう変わりはありませんが、オプションとして採れる有用な行動は数百通りはあります」

 取説をパラパラと斜め読みしながら㎡が言う。

「そんなに沢山、覚え切れんだろ」
「いえ、大丈夫でしょう」

 ㎡の大丈夫は、三割方あてにならんから困る。うさんくさい微笑みがつくと更に二割り増しだ。

「五割信用して下さるなら十分ですよ。
 コマンドは使いそうなものだけ覚えれば十分ですし、
 『機雷を撒く』とか『戦闘機を発進させる』みたいなコマンドが百種類あっても、覚えきれないという事はないでしょう」

「まあ、やってみない事にはなんとも言えないが……」

 俺はちらりと視線をテーブルにやった。
 コンピ研部員は、前回強奪したパソコンをていねいに起動し、ディスクを読み込ませている。

 団員用のノートパソコンは何故か、サテラビューを搭載したスーファミみたいな底上げがされている。
 外付けのオプションユニットにしても豪勢なデカさだが。

「ノートじゃグラボの性能が足りないから、容量と一緒に外付けで増設したんだ。Ⅳになってから、必要スペックも上がってしまったんでね」

 俺の疑問に答えるようにコンピ研部長が説明した。
 それにしてもグラボってグラフィックボードの事だよな?
 五台分も用意するとは、コンピ研は以外に金持ちの部活なのかもしれない。

「不正規品なら安いもんさ」

 おい、今なんか聞き捨てならない事を言わなかったか?

「いやあ、アキバの露店をうろついてたら偶然ね。変に人の良さそうなオジサンと綺麗なメイドさんがタダ同然で譲ってくれてさ」

 そりゃ㎡の組織の連中だっつーの。

 俺が胡乱げな視線を向けても、㎡はスマイルを崩さない。
 まあ、コイツの表情を崩すのは至難の業なんだが。

「ころねさんの心の平静を保てるなら、安い経費だとは思いませんか」

 いけしゃあしゃあと言ってのける。
 なるほど確かに無人島をひとつ貸し切りにするよりは安上がりかもしれないな。
 どっちにしても壮絶な無駄遣いだが、俺の知った事じゃない。

「で? まだ遊べないわけ?」
「無茶言わないで下さい。インストールにあと5分は必要なんです……」

 ころねに画面を覗き込まれたコンピ研部員がどぎまぎしながら答えている。

「15秒でやりなさい」
「んな無茶な」


 今のは多分、どっかの艦長か整備班長のマネがしたかっただけだな。


続く…

闇世界のなく頃に CM

多分平成22年某日 闇世界で起きた事件

それは背筋が凍るような事件だった―――



神月「まさか…あなたがこの事件の…!?」
この夏
ころね「…嫌な風ね…」
最凶の殺人事件が
㎡「なるほどな…分かったぜ」
幕を開ける!





闇世界のく頃に
                      闇殺し

近日公開!!するかも

毎日毎日あっついなぁ〜
そうだ、プールに行こう
…ということで
プールに行ってきましたw
気持ち良かったですw
話は変わりますがPC変えました

東方やったら動きが早すぎて死にましたw

ピアノは今猛練習してますw
またリクが増えましたw

運命のダークサイド
芥川龍之介の河童
千年幻想郷
フワラリングナイト

めんどいなぁw
さて、ピアノでも弾くか!(オーエン)


   完

闇々流星群 完成版だぜ!

   闇々仲間流星群「完成版」


01 - STAR RISE

I’m calling the STAR RISE
目を閉じて 闇の声 聞いてる
まだ知らない 私に出会いたい
I’m calling the STAR RISE
まばゆく 輝いてる闇たち
この手の中 降りてきて 流れ星・・・

02 - 寝・逃・げでリセット!
失敗だって Good night
寝逃げすることも悪くないよね
きっと目が覚めて 忘れちゃうみんな
失敗だって Don't mind
闇のまぶしさに消えてしまえばいいな
新しい一日でリセット!

03 - ハナマル☆センセイション

げっちゆ!
リアルに乙女のパンチ!効いたかな?
あんまりびっくりばっちりグーで引いたかな
細かいコトありでも先制がイイ
Lucky おっきい耳たぶにがぶー

Kiss!
ルールにしばってピンチ!泣いたたたー
げんなりがっつりぷっつりCで飛んだかな
食べたいならオススメ 天然だよー
どっきん ハナマル笑顔がぶっぶっぶー

04 - caramelldansen

中略w

ウッーウッーウマウマ(゚∀゚) ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)
ウッーウッーウマウマ(゚∀゚) ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)

05 - サクヤのグルメレース
誰よりも早く走り抜けろ もたもたしてると遅れちゃう
㎡達は待ってくれない すぐに誰かに殺される
誰よりも早く駆け抜けろ もたもたしてると殺される
㎡なんかに殺されるなんて
メイド長の名がすたるでしょ?!

06 - nowhere

闇チャット 闇チャット 闇チャット ひーはー!
                   ×4

07 - 執事のテーマ
執事 俺って執事 執事
オレ、俺って執事 執事
俺って執事 執事
俺達って執事 この俺こそ執事
この俺こそ執事 走り続ける サクヤにも負けず
俺正義のヒーロー 誰にも負けないぜ!

08 - Ievan Polkka

中略w

09 - 闘らないか

闘らないか 闘らないか バラ ライラ カイカイ!
この想いは止められない
もっと乙女ちっく・パワー♪きらりんりん
ちょっと危険なカ・ン・ジ

闘らないか 闘らないかバラ ライラ カイカイ!
もうドキドキ止められない
もっとドラマチック・闇♪ハレルヤ
二人だけで 殺らないか!


10 - 闇光
闇光闇闇光闇光( ゚∀゚)o彡°ヒューヒュー
闇光闇闇光闇光( ゚∀゚)o彡°ヒューヒュー
闇光闇闇光光闇光闇光 光闇光闇光闇闇光 HEY!

11 - モンタギュー家とキャピュレット家(呪いの館BGM)

中略w

14 - 殺すまでは眠らない!

無理だ!無理だ!
俺の実力では サクヤが強すぎて殺せない!

15 - 闇への咆哮

立ち上がれ 気高く舞え 天命(さだめ)を受けた闇よ
千の覚悟 身にまとい
君よ 雄々しく 羽ばたけ・・・

16 - ㎡が倒せない

・・・ないよ!
あの魔法が何回やってもよけれない
後ろに回ってうち続けても いずれは効果を消される
サクヤ達も戦っていたけど ㎡相手じゃ意味が無い
だから次は絶対勝つために 俺は協力だけは最後までとっておく

17 - ㍍

㍍ 目もあわせられない 恋に恋なんてしないわ 私
だって ㎡のことが

...好きなの。

18 - 闇大家族

仲良し闇 手をつなぎ
大きなまるい輪になるよ
町を作り闇チャの上
みんなで笑いあうよ
うさぎも空で手を振って見てる
でっかいお月さま
嬉しいこと 悲しいことも
全部丸めて

19 - 闇の憧憬

深い闇から 聞こえる声は
もう届かずに
足取り重く歩み続ける
この闇を頼りに

20 - 闇、無音、窓辺にて。
静けさに抱かれながら また今日も待っている
ゆるやかに降る 水じゃなくてもっとさびしい粒
音も無い世界に舞い降りた I was snow

(ページには赤い印 現れて踊りだす
つられそうだと思うなんて どうかしてるけれど
禁忌の魔法を 呟けば最後・・・)

21 - you

ネバーは今どこで何をしていますか?
この空の続く場所にいますか?
いつものように嫌われ者でいてくれますか?
今はただそれを 願い続ける

(嘘だっ!!!)
(うそだよっ!!!)

22 - 闇の男子は大変なものを盗んでいきました

嫌い キライ loving (ひゃっはは!ひゃっはは!はぁ!!)
誰が ダレガ can't be alive without you
どうしてなぜかしら (うっ ううっ うっ)
ははははっははははっは!!!!
(素敵よ㎡〜!!)
知らないわ
(キーボード ころね)
そんな魔法
(トランペット シェア
 ヴァイオリン たまご)
想いは伝えたらこわれちゃう
(ギター サクヤ)
あなたとは 違うから
ひとの心まで簡単に盗まないで

23 - U.N.オーエンは闇なのか?

リンゴと蜂蜜 紅茶のジャムはアプリコット
闇色のティースプーン 壁に放り投げた

早く遊ぼうよ 人形は今日も喋らない
一つしか知らない 悲鳴をあげているの

(ラッダッダッダラーララーラダララッダー
ララダララーラララッダーララダラダーァ
ラッダッダッダラーラダラッダー
ララダララーララッダラァァアアィィェ

ラッダッダッダラーララーラダララッダー
ララダララーラララッダーララダラダーァ
ラッダッダッダラーラダララぅあぉぅ
ララダララーラララッダラァァアッー!)

24 - お嫁にしなさいっ!

ぜんぶ 愛してほしいの 
私達を射止めた男子達 
ギュッと 抱きしめてほしいの 
わたし たちを およ、め、に、し、な、さっ、い〜

25 - おっくせんまん

通報されたチャットは 億千万 億千万 (はぁん♪)
過ぎ去りしチャットは グラフィティ
君が作ったチャットは 億千万 億千万 (はぁん♪)
過ぎ去りしチャットは ドラマティック

26 - Nar Ni Tar Saken I Egna Hander

Ah, nar ni tar saken i egna hander
Ah, nar ni gor som de pa tv gor
Da ska ni se att livet far en ny kick
Prova deras skona trick
Ah, nar ni racker fram och gor allt sjalva
Ah, nar ni slapper los er fantasi
Ar det inget att skammas for grannen gor nog likadant

27 - ヤミ闇ユカイ


アル晴レタ日ノ事
魔法以上の戦が
限りなく降りそそぐ 不可能じゃないぜ
明日また会うとき 笑いながらハミング
執事を殺そう
カンタンなんだよ こ・ん・な・の
追いかけてね つかまえてみて
おおきな夢&夢 スキでしょう?

28 - God knows...

だから、わたし
ついていくよ どんなつらい
世界の闇の中でさえ
きっと執事は輝いて 超える

29 - JOINT

この手を離さないで
君から伝わる思いから
闇に眠る願いが目覚める

30 - 解読不能

音を立てて 俺の顔 作っていく 綺麗に片方だけ

31 - The happy escapism song

32 - パーフェクトダークスター・パーフェクトスタイル

I still love キミの言葉が まだはなれないの
あの日あの場所で 凍りついた時間が
逢えないままどれくらい たったのかなきっと
手をのばしても もう届かない

33 - 闇で止まってすぐ溶ける〜狂気のころね
鎖鎌だし効いてるよ 鎖と鎌の合わせ技
鎖鎌だし効いてるよ 鎖と鎌だよ

34 - Help me sakuyaaaaaaaaa!!

あぁ、どうしよう!? 高く振りあげたこの腕
( ゚∀゚)o彡゜さくや!さくや!
私のお月様 逆さまのお月様
( ゚∀゚)o彡゜たすけてさくや!

35 - Little Busters!

高く飛べ 高く空へ 高く蹴れ 
高く声を上げ
いつか挫けた その闇の向こうまで
きみの声忘れない 涙も忘れない
これから始まる 希望という名の未来を
その足は歩き出す やがて来る過酷も

36 - 1000%SPARKING!

Sparking Now! 強くタフな闇
磨いたら世界は見違える
Sparking Now! 高くかざしたソウル
力の限り 目指せ1000%

37 - 闇VS意地
勇敢な瞳光らせ 進化していく闇
どこまでも未来を目指し

38 - エージェント夜を往く
もっと 高めて果てなく 闇の奥まで
貴方だけが使えるテクニックで
とかちつくちて
本能 渦巻くさなかに 堕ちてくときめき
今宵だけの夢 踊るわ激ちく

39 - ネイティブダーク

⑨㎡は美味しそうだけど
サクヤのお粥で我慢しとこう 
太らせて 食べるの だぁ↑

闇仲間の頂点目指して
今日も修行だ 石段ぴょこぴょこ
かえる跳びだぁ〜(ぴょんぴょん)

40 - true my heart

ture my heart キミを近くで 誰より感じたい
close to my love 瞳閉じて いつか叶うから
素直な 気持ち 抱きしめん

41 - ケロ⑨destiny

㎡がぴょこぴょこ 風にも負けず
尻尾はにょろにょろ オタマジャクシdestiny オタマジャクシdestiny

42 - YATTA! はっぱ隊

(YATTA! YATTA!) 執事が死んだ
(YATTA! YATTA!) ㎡も死んだ
ナイフ一個あればいい 生きているからLUCKYだ!
(YATTA! YATTA!) いそのまで死んだ
(YATTA! YATTA!) 闇の代表 
やんなるくらい健康だ Everybody say やったー!

43 - やみやみにしてあげる♪

あのね はやく DSiつけてよ
どうしたの?私をずっと見つめてる

君の事 やっみやみにしてあげる
闇はまだね頑張るから やっみやみにしてあげる
だから ちょっと 覚悟をしててよね

やっみやみにしてあげる♪世界中の誰、誰より
やっみやみにしてあげる♪だから もっと私に歌わせてね

44 - レッツゴー!執事

悪霊退散!悪霊退散!
㎡、サクヤ、困ったときは
ドーマン!セーマン!ドーマン!セーマン!
直ぐに呼びましょ 執事 レッツゴー!

★キライ 嫌い loving
おっくせんまんおっくせんまん!はぁ〜♪
★限りなく降り注ぐ 不可能じゃないぜ!
☆失敗だって Good night (寝逃げする事も)
★やっみやっみにしてあげる♪
☆もたもたしてると遅れちゃう ㎡達はまってくれない
★やがてくる過 酷も―

悪霊退散!悪霊退散!
いその、ころね、困ったときは
ドーマン!セーマン!ドーマン!セーマン!
助けてもらおう 執事 レッツゴー!
皆の頼れる執事 レッツゴー!
みんなのヒーロー し☆つ☆じ!








もしかしたら
この歌、唄って
うごメモ
出すかもね

byサクヤ










   閲覧センキュウウウウウウ!!!!!

暗闇に閉ざされた悪夢の街。

その悪夢の街で自らの命を、大切な者の命を、護るための”戦い”が始まろうとしていた。

Nightmare City 西区)

元はとても賑やかだった西区、商店街。

しかし今ではもはやゴーストタウン化して、人っ子一人見当たらない。

あるのは所々に散乱している瓦礫の山とテスターの死体だけ。

ーーーーーーー!!!!!

突如、西区に響き渡ったエンジン音。

それと同時に、悲鳴も上がった。

「ギャーーーーーー!!!!キモいよーーー!!!!!!!」

「まってぇぇ!!!!そこの色男ぉぉぅ!!!!!!!!」

「ぎゃーーーーー!!!!ひで君!!!もっと早く走ってぇぇっ!!!!!!」

「もう全力でとばしてるわっしょーーい!!!!」

西区の直線道路を全速力でとばしている軽トラック。

そのトラックを運転していたのはひでだった。

明らかに免許を持っていないようには見えないハンドル捌きで街中を爆走している。

荷台ではルピアが泣きながら叫んでいた。

そしてその軽トラックの後ろには、とてもつもなく大きな猫の姿をした管理AI「ネバー」が走ってついて来ている。

「お〜〜〜い!!!待ってくれよ〜〜う!!!!」

「キモすぎる〜〜〜〜!!!!!!!!!!!」

ルピアの手には薄暗い太陽光によって黒光りする機関銃がギュッと握り締められている。

だが一向にルピアがその機関銃の引き金を引く気配はない。

ルピアの額と目からは滝のように汗と涙が流れていた。

そもそも事の始まりは30分前だ。

・・・・30分前・・・・

ルピアとひでは軽トラックに乗って西区を駆け巡っていた。

すべては生き残りを見つけて、この世界から脱出するために。

途中で電気スタンドによって、電気を供給する以外(この軽トラックは電気自動車)はこの車からは一度も降りていない。

しかし1時間ほども西区を探し回ったが、テスターらしき者は依然として見つからなかった。

いい加減飽きたルピアは運転しているひでと会話を始めていた。

「ねえ〜ひで君〜〜」

「何だわっしょ〜い?」

「平和だね〜〜」

「平和だわっしょ〜〜い」

その会話は悪夢の町で生き抜こうとしている生存者には到底思えない。

ひではハンドルを右に回して十字路の一つの角を曲がった。

それと同時に荷台に乗っていたルピアがひでに向かって叫ぶ。

「ひで君!!人だぁ!!人いたよーー!!!!」

ルピアは荷台から腕をまっすぐに伸ばす。

その腕の延長線上には一匹の白い大きな猫がいた。

その大きな猫は走っている軽トラックを見るなり物凄いスピードで走ってくる。

そして一言呟いた。

「わおっ!なんとこんな街で色男発見♪」

この声に反応してもう2人(匹?)の同じ生物が十字路の角から飛び出してきた。

3人が並んでキモい走りかたで、こちらへと向かってくる。

そして2人が黄色く光るものを持っていた。

一人は黄色に光る車輪を手足につけて車のように走り、

もう一人は光るプロペラを尻につけて低空飛行をしている。

「お〜いそこの車の荷台に乗っている色男ぉぉ〜〜〜♪」

「まって♪」

「くれぇ〜〜〜〜〜い♪」

大声でそれらの言葉を発した3人の生物を見て、荷台に乗っているルピアは叫んだ。

心の底からの叫びを。

「キモっ!!!!キモすぎる!!!!!」

一方、ひでも荷台のルピアの様子がおかしいことに気づき窓から頭を出して後ろを確認する。

しかし、すぐにひでは顔を引っ込めアクセルを踏む足に力を入れた。

そして流れ出てくる汗を片腕で拭いながら大声でルピアに叫ぶ。

「ルピアさん!あいつら管理AIだ!!光る武器を持ってるわしょい!!」

「ちょっ!マジ!!!???」

突如大きなエンジン音が鳴り、スピードを上げた軽トラック。

危うくルピアは荷台から転げ落ちそうになった。

「逃げろわしょーーい!!!!」

・・・・現在・・・・

「キモいよォォぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!!!!!」

「ルピアさん!!銃を撃つわしょい!!」

「さっきやったけどコレ・・・弾が一発も入ってないんだよ!!!」

ルピアはもう、すぐ近くまで近寄ってきている八頭身に銃口を合わせる。

そして引き金を引くが、何一つとして起こらなかった。

「なんだってーー!!!!ルピアさん!!それヤバイわっしょい!!!」

「へぇ〜〜ルピアさんって言うのか♪」

「ねえねえルピアさん♪」

「僕達と♪」

「「「やらないか?」」」

見事にハモったその言葉にルピアは泣き叫びながら答える。

「キーーモーーーいーーよーーーー!!!!!!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――

Nightmare City 中央区

「ん・・・?なんだコレ・・・」

巨大なビルが縦横無尽に立ち並ぶ中央区

そのビルのために道路のほとんどは暗い影で覆われている。

そんな一区で、1200ccのバイクを乗り回している執事はバイクのミラーを見つめていた。

「なんだコレ・・・赤いぞ・・・」

そのミラーにはビルとビルの間を飛び跳ねる「赤い影」が映っていた。

執事は不審に思い、バイクのスピードをうんと上げる。

同時に、影の追いかけてくるスピードも上がった。

執事は何が後ろにいるのか確認しようと後ろを振り向いた。

ーーーー!!!!

「っ!!!??」

突如、飛来してきた赤く光るナイフ。

執事はそれを避けきれずに、バイクに当ててしまった。

しかも運悪くナイフが刺さったのは燃料タンク。

チョロチョロと燃料がタンクからこぼれ始めた。

執事は冷静に呟く。

「マズイ・・・光る武器ってことは管理AI,しかもこりゃ雑魚レベルじゃないぞ・・・?」

と呟くなり執事はどこからか携帯電話を取り出す。

そして執事が携帯電話を耳に当てるのと、大量の光るナイフが飛んでくるのは同時だった。

――――――――――――――――――――――――――――――――

Nightmare City 中央区 中央ビル)

まったくと言っていいほど人気のない荒れ果てた中央ビル。

至る所に転がっている電子機器は全くといっていいほど動く気配がない。

ビルの中は静寂が漂っていた。

突如、その静寂を破る電子音。

どうやらそれは携帯電話の音だった。

音とともに震えている携帯電話をどこからか出てきた一人の少女がイタズラに取る。

「はい、こちら○飾区○有公園前派出所・・・って何コレ?雑音ひどすぎ・・・・・」

携帯電話から発せられる雑音。

少女はなんとか頑張って耳を澄ます。

すると、聞き覚えのある声が雑音の向こうから聞こえた。

「シェアか!?俺・・だ早・・くいそ・・のに変わ・・・・ってく・・・れ・・・・・・!!」

「は〜い」

執事の焦っている声とは真逆に呑気にシェアは返事をした。

そして中央ビルのすべてのパソコンを弄っているいそのへと携帯電話を渡す。

いそのは執事からの電話だと悟り、すぐにシェアから携帯電話を受け取った。

「執事か、どうした?」

「どうしたじゃない!!!!!今管理AI、しかもメッチャクチャ強いやつに襲われてる!!

 しかもさっき燃料タンクがナイフに飛んできて、ガソリンが漏れ出した!!」

「OK,執事落ち着け。

 燃料タンクがナイフに飛んでくることはありえない。」

「んあ!!??とりあえず俺がさっき言ってた『あの作戦』をやるぞ!!

 用意しとけ!!!」

「分かった!」

といそのが呟くと同時にプツリと切れた携帯電話。

その携帯電話を床に置くと、いそのはどこからか一つのピストルを取り出した。

そして弾を確認して、シェアへと振り向く。

「シェア、あの作戦覚えてるよな?」

――――――――――――――――――――――――――――――――

Nightmare City 北区 電車内)

「・・・・・でこれどこに行くつもりだ?ええ?」

とりあえず、行き当たりばったりで電車に乗り込んだサクヤ。

しかし電車に乗ったはいいが、この電車が何処に行くのかまったく検討がつかなかった。

「まったく・・・確か駅は三つしかねえから、今北区で次が中央区・・・で次が南区か・・・

 どうせなら中央区で降りて執事たちと合流でもしますかな」

ガタン、ゴトン!と揺れる電車。

その揺れ方が気持ちよく、サクヤはコクリコクリと居眠りを始めた。

しかし、その居眠りも僅か30秒で終了することになる。

ーーーーー!!!!

「っ!!!?????」

突如、電車内に響いた轟音。

と同時に電車の天井に開いた大穴。

サクヤが驚いて言葉を出す暇もなく、その穴から緑色に輝くロープがサクヤへと伸びてきた。

「な、なにゃっ!?」

ロープはサクヤに絡みつくとすぐに電車の上へと引っ張りあげた。

「おわっとっ!!!!!」

ロープから開放されたサクヤはバランスを崩して電車の上でゴロゴロと転がった。

しかし、すぐに持ち前の身体能力で跳ね起きる。

そして目の前にいるロープを使ったと思える生物を睨み付けた。

「ずいぶんと手荒なマネしてくれるじゃん。

 お前、そんな顔して実はドSだろ?」

サクヤの目の前には緑色に輝く変なものを持った白い猫がいた。

その猫の顔は表情に乏しい、と言えるほど無表情である。

「お前・・・その武器ってことは管理AIだな?

 確か執事が言ってたぜ?光る武器を持ってたらそれは管理AIだって」

白い猫はやはり表情一つ変えずに、答える。

「・・・いや〜僕は管理AIじゃないモナ。

 君の気のせいモナ」

「うそつけぇ!!!いくら無表情でもそんなバレバレの嘘、5歳児でも分かるわボケェェ!!!!」

電車の上で猫に向かって人差し指を突き出すサクヤ。

猫はしょうがない、といったふうに首を振った。

「バレちゃしょうがないモナ・・・。

 でも自己紹介するときは自分から名乗るものモナ」

「いいだろう!!教えてやるぜ!!お前のそのミジンコ並に小さい脳みそに焼き付けておけ!!!!

 俺の名前は神月 裂夜!!!通称サクヤだぁぁぁ!!!!!!!!バァ〜〜ン!!」

最後に自分で「バァ〜〜ン」と効果音をつけて、ファイティングポーズをとったサクヤ。

思い沈黙が電車の上に漂う。

猫は口に出す言葉をしばらく見失っていた。

しかし、しばらくすると猫は言葉を出す。

「・・・・・ぼ、僕の名前はモナー

 君の言ったとおり管理AI№…2モナ」

管理AI№…2 コードMona  モナー

「がぁーーっはっはっは!!変な名前!!!」

「・・・・・・・・・・・キモッ」

その一言で完全にキレたサクヤ。

突如、無言になりナイフを頭上に構えた。

同時に、モナーもその手に持つ緑に光る槍のようなものを腰の辺りで構える。

沈黙と殺気が漂う電車の上。

しかし突如としてその沈黙は破られた。

「うおおおぉぉぉぉぉ!!!!!!」

最初に動いたのはサクヤだった。

ナイフを頭上に持ち上げたままモナーへと走る。

そしてナイフを力の限り振り投げた。

「そんなちゃっちい武器、俺が叩き切ってやる!!!!」

「・・・・無駄モナ」

ーーーーーーーー!!!!!!!!

地下に響いた金属音。

サクヤは自分の手に返ってきた衝撃で何が起こったのか瞬時に悟った。

自分の攻撃は防がれていると。

槍のような物で頭上からの攻撃を防いだままの状態でモナーは呟く。

「ついでに僕の武器も紹介するモナ・・・・

 これ、リードっていう僕オリジナルの武器なんだモナ。

 君たち人間の武器で言うと・・・そうモナね・・・・薙刀っていう武器に近いモナ」

「へえ・・・ミジンコ脳みそにしては随分と人間界のこと知ってんじゃん!!」

「ついでに言うとね、僕のIQは320以上なんだモナ」

「あいきゅー?ナニソレ?やっぱお前馬鹿だわ・・・。」

戦いが始まった・・・・。


「アヒャヒャヒャヒャ!!そろそろガソリン無くなってきたんじゃねーの!?」

「お前こそ体力ってのはねえのかよ!!!」

中央区では兄者とつーのデッドヒートが繰り広げられていた。

つーはビルとビルの間を飛びぬけ、その手に持つ赤いナイフを執事を投げる。

一方、執事も「あるビル」へとバイクを全速力で飛ばしながら、飛来してくるナイフを避けていた。

赤影は執事の叫びに答える。

「アヒャヒャヒャヒャ、バッカじゃねーの?管理AI・・・それもつー様に体力があると思ってんのカ!?」

執事は跨っているバイクの燃料ゲージを見る。

ゲージは無常にも10分の1ぐらいを指していた。

これではあと5km持つか持たないか・・・・。

突如、執事の跨るバイクで何かがゴンッと音を立てた。

執事は驚いて音のした後ろを見る。

「くっ!!また燃料タンクをっ!!!」

執事の見た光景。

それは燃料タンクに突き刺さる赤く光るナイフだった。

さらに不運なことにそのナイフはすぐに消え失せ、開いた穴からまた燃料が漏れ出す。

固いアスファルトの上に執事の進んだ道を指し示すような不透明な液体が流れ出た。

「やばい・・・これじゃもう殆ど持たないっ!!」

「アヒャヒャヒャヒャ!!悪かったナ!!ワザとしちまったっ!!!!!」

「誤ってすむなら俺のバイク弁償しやがれ!!!!」

「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!!わりーな!!お前ここで死ぬから弁償できねえんだよっ!!!」

しかし、突如執事の口の両端がつり上がった。

つーの言った言葉に笑ったのか、それとも他の理由なのか。

「よっしゃぁっ!!・・・俺の勝ちだ!!」

「アヒャ!?とうとう頭クルッタか!?」

執事が口の端を吊り上げた理由。

それは単純に「目的としていた物」が見えたからだった。

そう、それはいそのたちのいるビルとは真向かいのビル。

執事はそこへ向かって残りの燃料すべてを使いきれるようにバイクの速度を上げ始めた。

そしてビルの中に入るなり階段をバイクで登り始める。

「いでっ!!!!じだがんだ!!!(いてっ!!!!舌噛んだ!!!)」

「アヒャヒャヒャヒャ!!バカじゃn・・・いで!!舌噛んだ!!!!」

この時執事の脳には二つの疑問が浮かび上がった。

一つは燃料が持ってくれるのか。

一つはこのバカにも舌があったのか。

そんなことを思いながら走っていると、薄暗い暗闇が漂う階段の先に一筋の光が輝いた。

それは屋上の光であり、執事にとっては希望の光。

「よし・・このまま・・・」

ーーーーー!!!!!

と、つぶやくと同時に屋上へと続くドアをバイクで突き破る。

同時にバイクの前輪がぷしゅ〜と気の抜けた音を発した。

どんどんとバイクのスピードが落ちてくるが、執事は気にせずに屋上を走り抜ける。

しかし、落ちるスピードが予想外に大きい。

「やべっ!!これヤバいんじゃないの!!??」

「アヒャヒャヒャヒャヒャ!!ぜ・つ・ぼ・うだな!!」

後ろには相変わらず赤影がついてきている。

時速100kmのバイクについてこれるのだからその速さは半端なものではないだろう。

よくがんばったな、と執事は最後に心の中で呟く。

そして屋上の柵へと全速力でバイクを飛ばした。

「おわぁぁぁおあぁぁぁおxじゃdじえあんヴぁいおdんbf!!!!!!!」

奇妙な叫び声をあげながら執事は宙へと飛び出した。

まるで○Tのあの名シーンのように。

執事のその瞳の先にはいそのとシェアの待っているビルが聳え立っていた。

一方、つーは一瞬面食らったもののすぐに宙へと飛び出す。

赤く光るナイフをその手に握って。

「アヒャヒャヒャヒャ!!!逃がすはずねえだろぉっ!!!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(中央ビル)

執事から連絡を受けて以来、いそのはずっと広大な窓を見つめていた。

ガラス張りの巨大な窓には少しだけ明るくなり始めている太陽と、聳え立つビルが映っている。

しかし、今まで動きのなかったいそのに突如として動きを見せた。

「っ!!シェア!!さっき俺が言ってた事、やるぞ!」

というなり、握っていたピストルを窓に向けた。

それに見習うようにシェアもピストルを窓に向ける。

「シェアは俺が銃を撃って2秒後に引き金を引くんだぞ?

 タイミングをミスれば俺たち全員死ぬと思え!!」

「は、はいぃっ!!!」

めったに見せないいそのの真剣な顔にシェアはびびりつつもピストルをしっかりと握り締める。

1秒・・・10秒・・・20秒と、静寂がビル内に漂う。

しかし次の瞬間、耳を裂くような銃声がして、窓ガラスが大きな音を立てて割れた。

いそのがピストルの引き金を引いたのだ。

そして窓ガラスが割れたと同時に、そこからバイクが飛び込んできた。

それを確認したいそのは叫ぶ。

「今だ!!撃てシェア!!」

ーーーーーー!!!!!!!

パン!と乾いた銃声がビル内に響く。

それと同時に何者かが、窓のあった淵に飛び降りてきた。

「アヒャ!?」

飛び降りてきたのはつーだった。

しかし、次の瞬間にはつーはその場から消えた。

シェアの放った鉛弾に撃たれたのだ。

「ア〜ヒャ〜ァァァ〜〜〜〜」

と奇妙な叫びを上げながらつーは『40階』から地面へと落ちていく。

それからしばらく3人は我を忘れて唖然としていた。

しかし、一番早く立ち直った執事は作戦を見事にこなした二人に向かって右手を突き出す。

「よくやったぞ!お前たち!!」

「ははははは、そういう執事もよくやったな」

「それよりさっきのバカっぽいのが大きい執事が言ってた『管理AI』?」

執事は壊れたバイクから降りて、二人へと歩み寄る。

そして険しい顔をしながら呟いた。

「残念だがもうこの辺には生き残りはいそうにない・・・

 ということで他の地域行くぞ。

 たぶんここの場所もさっきの銃声でばれただろう」

軽くシカトされたシェアは顔を膨らませる。

いそのは執事の肩に手を置き、呟いた。

ナイフで掠れて血が出ているそのたくましい肩に。

「ところで執事」

「時になんだ?いそのよ」

しかし、お互いに言いたいことは分かっていた。

二人で顔を見合わせて、叫ぶ。

「「流石だよな!俺ら!!」」

Nightmare City 地下鉄)

電車の速度によってすごい風圧が発生する電車の上。

そんな悪条件の中でサクヤはモナーとの戦いを続けていた。

「くそぉぉっ!!!なんで一発もあたらねえっ!!」

「それは君が弱いからだモナ。頭も体も・・・ね」

「んだとっ!!!!」

逆上したサクヤはその手に持つ太刀をめちゃくちゃに振り回す。

だがモナーの持つ「リード」にすべて弾かれた。

それでもサクヤはとにかく太刀を振り回す。

「うおおおらぁぁぁ!!(くっ!もうあんまし体力残ってねぇ!!!!)」

それでも太刀を握る手を止めることは出来なかった。

一瞬でも動きをやめたら、モナーの持つ薙刀に体を貫かれてしまうから。

それだけサクヤは不利な状況なのだ。

太刀を振り回しながらサクヤは考える。

「(それになんだっ!?コイツ・・・さっきから俺の動きを読んでるのか!?)」

「正解モナ」

「っ!!!???」

口を動かしていないのにモナーに話しかけられた。

それに驚いたサクヤは一瞬、攻撃の手を緩める。

風景がすごいスピードでスクロールしていく。

「油断しちゃいけないモナよ?」

「っ!!」

サクヤが心の中でしまった!と思うのと、体に激痛が走るのはほぼ同時だった。

モナーの武器に吹っ飛ばされたサクヤは電車の上を転がる。

更に風圧も手助けをしてサクヤを電車から落とそうとした。

しかし、電車の端から宙に落ちそうになる瞬間、サクヤは手を差し出し電車の端を掴む。

同時に左肩に激痛が走った。

「ぐあぁぁぁっ!!!」

激痛が体全身を電気のように走り回った。

それでもサクヤは耐えて、電車の上へ登ろうと力を入れる。

しかし、電車の端を握るサクヤの手の甲に痛みが走った。

サクヤは何とか顔を上げて、自分の手の甲へと足を乗っけているモナーを睨み付ける。

「な・・・なんで俺の考えてることが分かった!!!」

「僕のこの武器はその名前『リード』って言うとおり、相手の行動を先読みできるモナ

 それに合わせて僕は防御してたモナ」

「ぐあぁっ!!!」

ギリギリとサクヤの足を踏みしめるモナー

最後に、とモナーは呟いた。

「そうそう、最後だから教えてやるモナ。

 君達がいろいろと生き残りのテスターを探しているのは知ってるモナ。

 そして・・・・南区に行っている『㎡』ってやつ・・・確実に死ぬモナ。」

「ん・・んだとっ!?」

「南区には僕達の中で『最強』の№『1』を持つ管理AI『モララー』が待ってるモナ。

 彼にかかればどんなやつだろうと殺されるモナ・・・って言っても君もここで死ぬんだけどね」

そういってモナーは緑色に光るその武器を振り上げた。

と、思うと同時に振り下ろす。

ーーーーー!!!!!

電車に、空中に、モナーに赤い血が飛び散った。

おそらくサクヤの血だろう。

通常ならここで殺したと確信して武器をしまうはず。

しかしモナーは武器を握り締め、遠くの路線を睨み付けていた。

風景がものすごいスピードでスクロールしていく中、彼は呟く

「・・・・・あ〜あ、逃がしちゃったモナ」

Nightmare City 地下鉄路線)

「くっ・・・・体が・・・痛てぇっ!!!!」

サクヤは路線の上で蹲っていた。

彼女の左肩には十字状の切り傷が刻まれている。

そしてそこからポタポタと血が路線に垂れ落ちていた。

「・・・ってか、ここは中央区駅・・・」

彼の瞳には「中央区駅」と大きく書かれた看板が映っていた。

サクヤは残っている力のすべてを出し切り、駅のプラットホームへと上がる。

そして呟いた。

「くっ!!!・・・㎡・・・・死ぬなよ・・・!!」

自分が死に掛けているのに親友のことを心配する。

そんな自分に苦笑いを浮かべたサクヤ。

そしてフラフラと頼りない歩き方で、出口へと向かっていく。

太刀を杖にしているが、限界というものがある。

サクヤは心の中で大きく叫んだ。

”㎡!!!!俺がそっちに行くまでぜってぇくたばんじゃねえぞ!!!!!”




続く

其の羽 闇天狗 最速の名を呼べ
操る闇を受けて 巻き起こせ嵐を

貫く闇こそが生き様
いまこそ打ち破れ常識を

最速最高の瞬間を魅せつけて
遥かなる高みへ もっと強く羽ばたけ
FLY HIGH 誰もが羨んだ姿に届くまで

全てを追い抜いて

其の羽 闇天狗 神風の少女よ
操る闇は自在 千年は伊達じゃない

真実知るために切り抜いた
目指すは光の向こう側

全速全開のスピードで辿り着け
届かない場所なら もっと高く遠くに
FLY HIGH 誰もが振り向いた姿も置き去りに

全てを越えていけ

最速最高の瞬間を 全速全開のスピードを
立ち上がれ 突き抜けたその先を知るために
FLY HIGH いますぐ加速しろ