闇夜の紅き月 第一話
ここは近未来の世界。
科学的に異常なほど進歩が進んであり、
町には宙を走る車や、立体ホログラムなどがあふれかえっていた。
そして、ほとんどの少年少女の将来の夢が「学者」になるという世界。
だが、実際は少子化の影響で子供たちの数は少なくなっている。
そんな世界のなかでも、最も科学のトップに立つ町「セカンドシティ」
突然、「セカンドシティ住宅街」のある1つの家から大きな物音がした。
「だぁぁ〜〜〜〜〜!!なんで9時なんだよ!!急げぇぇ!!」
急いでベッドから飛び起き、寝巻きをなぐり捨てて私服に着替えだした金髪の少年は
高校1年生。通称㎡と呼ばれている。
㎡「くそっ!!いつも寝坊しないくせになんで今日に限って寝坊なんだよ!!」
独りでブツブツ言いながらも㎡は手作りの朝食をとっている。
その内容は「目玉焼き(醤油)+サラダ」という簡単な食事だった。
しかし、今日は日曜日なので彼の学校は休み。
それなのになぜ㎡はここまで急いでいるのかというと今日は『ある実験』に参加できる日なのだ。
なんでもその内容というのは世界中で有名なある会社がDream Cityという仮想空間の中に入り、
1週間生活をしてほしいという簡単な内容だった。
その有名な会社はこのセカンドシティに本社を置いているので、
この町の中からさまざまな人を募集している。
そして、たまたま㎡の通っている学校にも6人ほどテスターを求人してきたのだ。
㎡は友人とともに応募すると100人中6人というなかに当選したのだ(ちなみに友人も当選)
だが、学校での成績がよくもなければ別に科学に興味のない㎡にとって、
この実験はそれほど大きな意味は無いのに
なぜ、応募したのかというとNightmare CityというとあるFlashのファンで、
『もしかしたらあの主人公のように?』と思い応募したのだ。
―Nightmare City―それはこの世界ではあまり有名ではないが、知る人のみぞ知る名作である。
そんなこんなしているうちに㎡は身支度を終えたようだ。
㎡「準備終了!!」
気合の入った声とともにドアを蹴り飛ばした。
㎡は蹴り飛ばした勢いを保ったまま鍵を閉めて、そのまま愛用の自転車にまたがる。
そして彼の足がペダルに触れた瞬間、ペダルはものすごい勢いで回転を始めた。
㎡「オラオラオラオラオラオラオラオラァァァ!!!!!」
人間とは思えないスピードで路地を爆走していると、突如前の角から自転車が飛び出してきた。
寸前の所でギコは急ブレーキをかけて止まる。(その際に大量の火花が飛び散った)
同時に相手も急ブレーキをかけて止まった。
「「っ!危ねっ!!」」
同時に同じ言葉を出して、㎡と相手は睨み合う。
「「真似すんじゃねぇ!!」」
㎡と相手もまた言葉をハモらせてしまったことに気づく。
お互いに顔を見つめ合い、今にも喧嘩を始めそうだ。
「おい、サクヤ!!そっちが真似すんじゃねえよ!!」
サクヤと呼ばれた少女は負けじと言い返す。
サクヤ「はぁ!?ふざけんな!㎡の方から突っ込んできたんだろが!!」
町中で大声をあげる少年、少女を、通行人の殆どが変な目で見ているが二人は気にしなかった。
お互いに自転車を置いて、お互いの胸倉を掴み合う。
「「お前のせいで実験に遅れるだろうが!!」」
「「っ!!実験!!」」
二人とも自分の目的を思い出して自転車に跨り直した。
ここらで、サクヤの解説をしておこう。
本名、神月 裂夜 高校1年生。
天然パーマが少しかかった白銀の少年で、ニックネームは「サクヤ」。
今回、この実験に応募した理由は単に1週間学校に行かなくてすむということだった。
㎡とサクヤは小さいころからの大親友で、いつも喧嘩をしては㎡が勝っている。
㎡「俺が一番乗りだぁぁぁ!!!」
サクヤ「300戦中250勝の俺が負けるはずがない!!!」
二人でそんな話をしながら爆走していると急に路地が明るくなった。
と同時に、町に大きな鈍い音が響く。
ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!
「「痛てぇぇぇーー!!!!!!」」
本日5回目の見事なハモりで大声をあげる。
二人は、街路樹に自転車ごと突っ込んでしまっていた。
幸いなことに、怪我は無く自転車も無事だ。
㎡はいち早く立ち直り、前を向く。
「これが・・・」「セントラルビル・・・」
今度は言葉を二人でつなげた。
㎡は顔をしかめながら、セントラルビルを見上げる。
セントラルビルはあまりにも巨大で、のしかかって来そうな威厳を保っていた。
サクヤ「やっぱ、近くでみるとデカイよな」
サクヤもやはり驚いているようだ。
㎡は首が痛くなってきたので前を向きなおすと、セントラルビルの玄関にはたくさんの報道人が群がっていた。
”たぶん、今回の実験をネタにしようと思ってるんだろう”
㎡とサクヤは自転車を立ち上げ、鍵をかける。
そして、テスターのみしか教えられていない裏口へと足を回し、セントラルビルの中へと入っていった。
(セントラルビル内)
セントラルビル内はやはりとてつもなく広く、予想通りに白衣を着た研究員が忙しそうに走り回っていた。
おそらく、テスト前だから忙しいんだろう。
「うっひょーーやっぱ有名な会社の本社はすげーな!」
「サクヤ、ハズいから黙れ」
㎡とサクヤはビルの中を見渡していた。
特にサクヤははしゃいでいる。
「そういえば、どこに行きゃいいんだ?」
「さあな、㎡こそ調べてなかったのかよ」
最後にサクヤは「ちっ」と舌打ちをして周りをよく見渡した。
周りには白衣、白衣、白衣・・・・・と研究者ばかり。
「おっ!あそこにいるやつらは研究者じゃないんじゃないか?」
サクヤが指を指した先には2人の人間がいた。
二人もフードをかぶっているので「多少」怪しいが、たぶんテスターなのだろう。
㎡はそう思い込んで、2人へと歩み寄った。
「すいません、テスターはどこに行けばいいか知っていますか?」
「ん?34階だが、君たちもテスターなのか?」
そう言って、背の低い人(それでも十分高いが)がこちらを振り向いた。
同時に、フードが外れて顔が見えるようになる。
「いその!!」
㎡は大声で友人の名前を呼んだ。
いその・・・もちろんニックネームであり、本名は不明だ。
青髪で、整った顔、「イケメン」と呼ばれてもおかしくない設定である。
「おお、㎡じゃないか。」
「ということは、こっちは・・・」
「ん?執事だぞ」
その言葉と同時にもう一人もこちらを向いた。
いそのと同じように、振り向いたと同時にフードが外れる。
「おお、久しぶりだな、サクヤ&㎡」
こっちは執事と呼ばれる青年だった。
緑髪で整った顔・・・という訳ではなく、顔は普通だ。
㎡は金髪の髪を掻きながら弟者に問いかける。
「二人で当選なんてすごいな。これでシェアがいたら流石闇三人集全員集合なのに・・・」
「私はちゃんといるのじゃ」
突如、少女の声がした。
と、同時に執事の背後から小さな少女が現れた。
髪の色は薄い青紫で、顔が幼い。
「おお!シェア・・・ということは流石三人集が全員当選!!??」
「そういうことになるな」
流石三人集とは執事、いその、シェアの3人のことだ。
この3人は常に(特に執事といその)はいつもいっしょにいる。
「ちょ、すごくね!?これ」
㎡が興奮して喋っていると、隣からサクヤが口を挟んだ。
「おい、そろそろ時間じゃないのか?」
「おお、そういえばそうだな」
その言葉に執事が反応して時計を見た。
9:56、今から行けばちょうど間に合うぐらいだろう。
「じゃあ、エレベーターで34階まで出発!!」
そういいながら㎡とその仲間はエレベーターへと向かっていった・・・。